| 大隅の田の神さあ3 (伊佐市<旧大口市・旧菱刈町>) |
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| 伊佐市は平成の大合併よって2008年に大口市と菱刈町が合併して誕生した市である。伊佐市の田の神の中で県の民俗資料有形文化財に指定されているのは旧大口市の「平出水の田の神」のみである。「平出水の田の神」は大日如来を彫って田の神とした珍しい像である。旧大口市には個人持ちや回り田の神を含めて160体ほどの田の神像があるが、旧大口市はほとんど回ることができず「平出水の田の神」を含めて3体の紹介にとどまった。旧菱刈町については近くの宮崎のえびの市をよく訪れていたことや、宮崎県発祥といわれる衣冠束帯姿の神官型の田の神が多くあることなどで数回訪れた。旧菱刈町では「徳辺の田の神」や「堂山の田の神」・「前目の田の神」などは宮崎でよくみられる腰掛け神官型の田の神である。他に神官型座像の「湯之尾猶原の田の神」・「本城南方神社の田の神」・「築地下の田の神」や農民型の「湯之尾前田の田の神」・「荒田の田の神」などユニークな田の神がある。 |
| 平出水の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市大口平出水 「享保6年(1721)」 |
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| 仏像型田の神として地蔵菩薩を田の神として祀った「紫尾の田の神」(宝永2<1705>年)や中組の田の神(宝永八年<1711>)が知られている。これらは最も古い紀年銘を持った田の神である。「平出水の田の神」も仏像型の田の神である。しかし、地蔵菩薩ではなく大日如来像である。石台正面に「大日如来を本地として御田之神を造立した」という意味の言葉が書かれていて、大日如来を彫って田の神としたことは明らかである。 六角形の台上の反花と蓮弁の蓮台に坐す宝冠をかぶり、両手で胸前で智拳印を結んだ金剛界大日如来像である。穏やか顔立ちの像手で、衣のひだか複雑に重なった精緻な表現の像である。県の民俗資料有形文化財に指定されいる。 |
| 岩清水神社の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市大口小川内(こがわうち)117 |
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| 伊佐市役所がある市の中心地から国道268号線を北方に9qほど行くと「小川内関所跡」の案内板がある三叉路に着く。案内板に従って1.5q進むと「小川内関所跡」のある小川内前田である。その集落の北の清水神社の社殿の横に「小川内岩清水神社の田の神」が祀られている。像高62pの神官型座像の田の神で、右手の先は欠けていて、左手は輪をつくっている。江戸時代の作と思われる。竹林の混ざった山が背景に座す田の神像は質素ながら落ち着いた厳粛な趣がある。 |
| 猩々(しょうじょう)の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市山野井立田1547 |
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| 「岩清水神社の田の神」のある小川内川の谷の尾根をはさんで一つ南の井立田川の谷の猩々(しょうじょう)という集落の民家の高い石垣の前に「猩々の田の神」がある。メシゲを持ち裁着け袴をはいた、野良着姿の農夫をそのまま田の神にしたような素朴な田の神像である。像高63pで笠状のシキを被り右手でメシゲを膝の上に置き、左手は膝の上で輪組にした腰かけ像である。江戸時代の作と思われる。 |
| 猶原の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈川北湯之尾駅前 |
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| 旧菱刈町は鹿児島県で唯一、衣冠束帯姿など公家装束の神官型の田の神が多い地域である。鹿児島県ても時々見かける神官型座像だけでなく、宮崎県でよく見かける腰掛け神官型もある。そこで旧菱刈町は神官型の田の神を中心に紹介する。まず始め4体は神官型座像の田の神である。 九州道「栗野IC」より国道268号線を北へあがって伊佐市菱刈に入って最初に目にする田の神が国道268号線沿いにある山野線「湯之尾駅」跡の公園にある「猶原の田の神」である。新しい覆堂の中に国道に向かって座している。神官型座像の田の神で両手を膝の上に合わせて笏を持たすために輪組にしている。赤と白、黒、ピンク色で化粧(彩色)している。雑な彩色をしている田の神が多い中でこの像は白い顔の目の下と鼻筋にピンク色を入れ、上品な化粧となっていて、化粧した人のセンスの良さが光る田の神像である。 |
| 仁王の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈下手仁王 |
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| 菱刈下手の仁王集落の用水路沿いにある墓地の横に小さな集会所があり、集会所の裏に用水と水田に向いて田の神像が座している。神官型座像の田の神で右手で握り飯を持ち、左手を膝の上で輪組する。輪組した手に笏やメシゲを持たしたと思われる。冠は甲のみを表した田の神が多い中、この像は巾子と纓も彫っている。赤と白・黒で化粧(彩色)しているが目鼻の化粧は稚拙である。 |
| 築地の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈川北築地 |
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| 旧菱刈町を流れる川内川の流域は広い水田地帯になっていて、「築地の田の神」はその水田地帯の用水路の横に水田に向かって座している。この像も神官型座像の田の神で両手を膝の上で合わせて笏をさせるように輪組している。長い間、化粧(彩色)されていないようで黒と白の彩色の跡が一部、残るのみで、供花された痕跡もなく忘れられたような田の神である。しかし、衣文などは直線的で硬い表現であるが造形はしっかりしていて、旧菱刈町の神官型座像の田の神の中では優れた田の神像である。 |
| 本城南方神社の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈南浦3516 「天明元年(1781)」 |
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| 「本城南方神社の田の神」は本城小学校の北東にある南方神社の片隅に田んぼに向かって静かに座している。神官型座像の田の神に見えるが衣冠束帯姿ではなく武士が着る裃姿で膝の上で両手を合わせている。冠の甲らしきものを被ているので武士ではなくやはり神官と思われので神官型座像の田の神として載せる。旧菱刈町の神官型座像の田の神は多くが彩色去れているがこの神は彩色されていない。市指定文化財になっている。 |
| 前目の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈前目 |
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| 「前目の田の神」は宮崎県でよく見かける腰掛け神官型の田の神で、瓦葺きの吹き抜けの覆屋の中に祀られている。顔を白く彩色し、目鼻口と冠の甲を黒くした、残りはすべてベンガラ色に塗られている。手は膝の上で合わせて輪組するのではなく、別々に膝の上に置いている。田の神像の横に龍神像があり、これも田の神像と覆屋の柱と一緒にベンガラ色に塗られていた。 |
| 下名の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈前目下名 |
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| 「前目の田の神」から2qほど北西に「下名の田の神」はある。この像も「前目の田の神」と同じ腰掛け神官型の田の神で、「前目の田の神」とそっくりなベンガラ色の目立つ、彩色である。手は「前目の田の神」と違って膝の上で合わせて輪組する。両袖と背中に丸に十の字の島津家の家紋を刻んでいる。彫った石工は「前目の田の神」と同一人物かどうかはわからないが、化粧(彩色)した人は同じ人と思われる。 |
| 前目麓の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈前目麓 |
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| 「前目麓の田の神」は現在、県道県道424号線沿いのコンクリート製の2段の基壇の上に置かれている。薩摩の腰掛け神官型の田の神では最も優れた田ノ神の一つで像高106p、袂部での幅100センチの、宮崎県でも見られない大型である。衣冠束帯の服装で、頭に冠の甲が載っている。袖は左右にはねており、両手を膝の上に合わせて孔を作っている。祭るときに笏を持たせるためと思われるが、現在は茶碗が置かれている。赤と黒・白で丁寧に彩色されている。(※リニューアル前はこの田の神は小野重郎著『田の神サア百体』に合わせて「堂山の田の神」としていたが、堂山という地名は地形図などに載っていないので「前目麓の田の神」とした。) |
| 徳辺の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈徳辺小路 |
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| 「徳辺の田の神」は徳辺簡易郵便局の南の水田地帯の民家横の林の下に祀られている。腰掛け神官型の田の神で像高92pで衣冠束帯の服装で、頭に冠の甲が載っている。「前目麓の田の神」とともに薩摩を代表する腰掛け神官型の田の神である。初めてこの像を見た時は、補修のため付けらられた鼻や稚拙に描かれた目が気になって好印象を抱かなかった。しかし、よく見てみると「前目麓の田の神」と同じように均整のとれた姿態の重量感にあふれた像であることが分かった。小野重郎著『田の神サア百体』(1980年刊)の補修前の写真を見るとそのよさがよくわかる。安直な補修をせず、そのままで黒灰色の粗面を残すか、丁寧なセンスのある化粧をすれば、よりこの像の魅力が生きたと思われる。 腰かけ石の側面に「日州 雅楽」という刻銘がある。「雅楽(毛利雅楽)」は宮崎の小林市野尻の三ヶ野の神像や小林市南西方の立野の田の神像にも見られる銘であり、享保(1716〜1736年)や延享(1744〜1748年)年間に活躍した宮崎の石工と思われる。 |
| 湯之尾前田の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈川北湯之尾 |
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| 「湯之尾前田の田の神」は湯之尾神社の北西の道路沿いの覆屋の中に祀られている。へらのような小さなメシゲとソフトクリームのように飯を盛った椀を持ち、シキの下に頭巾のようなものを被っている田の神像である。赤と白で彩色されているが、赤い色が色あせてピンク色になっていて白い小さな顔とユニークな姿で童話の世界のような趣がある。 |
| 荒田の田の神 |
| 鹿児島県伊佐市菱刈荒田 「明治27(1894)年」 |
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| 「荒田の田の神」は「荒田下」バス停の東の道路沿いにある。大黒天のような大きな耳とふくよかな顔を持つ田の神で、右手にメシゲを持ち、左に小さな握り飯のようなものを持つ。像の側面に「明治二十七年八月」の刻銘がある。 |