京都の石仏

 

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 京都は奈良とともに古い石仏の宝庫である。特に鎌倉時代の作が多く、寺院の境内や墓地・町の辻堂などに祀られている。そのほとんどが、花崗岩製の独立した石仏で、磨崖仏はみられない。
 奈良では線刻・薄肉・半肉・厚肉、あらゆる手法による石仏がみられ、尊名も地蔵石仏と阿弥陀石仏を中心に弥勒・不動・観音・釈迦・薬師とバラエティーに富んでいる。それに対して、京都の石仏は厚肉彫りの如来像がほとんどで、それも定印の阿弥陀座像が多い。これは、京都が藤原時代以来の浄土教信仰の中心であった、伝統によるものと思われる。

 そのような京都を代表する石仏が鎌倉中期の元仁元年(1224)の年号を持つ石像寺阿弥陀三尊石仏である。 中尊の阿弥陀如来は弥陀の梵字「キーリク」が11個、小円形に刻まれた、二重円光の光背を背負い、二重の蓮華座上に結跏趺坐する。穏やかな整った顔やよどみのない衣紋はみごとである。この石像寺阿弥陀の源流にあたる石仏が比叡山の西塔の香炉ヶ岡の弥勒石仏である。石像寺阿弥陀と同じように梵字が彫られた二重円光光背で、丸彫りに近い厚肉彫りである。顔は満月相で、頭上の肉髻は高く、平安末期の作と思われる。

 川勝政太郎博士はこれらの石仏を叡山系の石仏として高く評価された。北白川阿弥陀石仏や戸寺阿弥陀石仏、大原阿弥陀石仏なども叡山系の石仏で京都を代表する石仏である。

 大沢の池の胎蔵五仏を中心とした石仏群も厚肉彫りの優れた石仏である。自然石を光背形に荒く作って、前面に丸彫りに近い厚肉に彫りだしたもので、顔は藤原時代の満月相が残る。慈芳院薬師石仏や安養寺前の阿弥陀石仏、岩倉三面石仏なども厚肉彫りの秀作であるが、白川石とよばれる軟質の花崗岩のため、風化摩滅がすすんでいる。

 善導寺、釈迦三尊石仏は京都では珍しい半肉彫りであるが立体感があり、絵画的な趣もある秀作である。

 

参照文献

『京都の石造美術』 川勝政太郎 木耳社
『京都の石仏』 佐野精一 サンプライト出版
『京都の石仏』   清水俊明 創元社
『京の石造美術めぐり』 竹村俊則・加登藤信 京都新聞社