田の神さあ(4) 宮崎の田の舞型・農民型

  宮崎県にも田の舞型やメシゲ持ちの田の神像が多くある。中でもえびの市の山形家の田の神は秀作である。右手に大きなメシゲをかかげるように持ち、左手にはメシを盛った椀を持って、力強く一歩踏み出して、田の神舞を踊っている様子を表している。めくりあがった袖口や肌けた襟元など写実的な着衣の表現がこの像をより動きのあるものにしている。鮮やかに彩色された下浦の田の神は、たすき掛けで両手でメシゲを持ち、中腰で左足を力強く出して田の神舞を舞う姿を表している。昌明寺の田の神はヘソを出したユーモラスな姿の田の神像で、いたずら盛りの子どものようで、可愛らしい。末永の田の神は稚拙な表現の像であるが赤と白の見事な彩色が際立っていてえびの市の田の神では最もよく知られている。

 小林市の松元の上の田の神は、右手にメシゲをかざし、左手に枡を抱いて、野良着を着て、両足を丸出しにして、右足をやや踏み出し、地べたにつきそうなほど、低い姿勢でかがみ田の神舞を踊るユニークな田の神像である。高原町の並木の田の神小塚の田の神はともに、メシゲと枡を持って安座する田の神である。並木の田の神は味わい深い顔をした田の神である。

 乙房神社の田の神西高木の田の神穂満坊の田の神正近の田の神は、大きなシキをかぶり右手にメシゲ、左手に碗を持つ田の神像で、碗は真上から見た姿を真正面に彫りつけ、見た目にはボールを持った形になっているのが特徴で、都城周辺に多くある。中でも乙房神社の田の神は保存状態がよく大きな鼻とにっこり笑った顔で魅力的な田の神像である。

 西生寺の田の神は、シキを被り、右足を踏み出し、中腰になって体を前に傾け、右手に椀、左手にシャモジを持ち、袖をひるがえして田の舞を踊る姿を表す秀作である。丸谷の田の神は直立した像にかかわらず、風になびくかのように彫られたボリュームある衣が像に動きをつけ、大きなメシゲを持って踊っている巫女のような雰囲気がある。背中に大きなワラヅトを背負う。

 田上の田の神東新町の田の神はともに野良で働く農夫といった風情の田の神で着衣はベンガラで彩色されている。共に右手にメシゲを持つが、左手は田植えの田の神は椀、東新町はスリコギを持つ。 
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